「季節を感じる暮らし」は、身近なところにある
紅葉を見に行ったり、秋祭りに出かけたり。
季節の行事に触れたときに、「ああ、秋だなあ」と実感することはよくあります。
けれど、特別なイベントがなくても、暮らしの中にはたくさんの“季節のしるし”があるように思います。
朝、少し冷たくなった空気にふれて手をすり合わせるとき。
食卓にあたたかい汁物が欲しくなるとき。
急に食べたくなったさつまいもやきのこの香り——
何かをしようと意識する前に、からだや気持ちが自然に反応している。
それがきっと、「季節を感じる」ということの始まりなのかもしれません。

器や食材の変化が、季節を連れてくる

秋が深まってくると、涼しげな器よりも、土ものや落ち着いた色合いの器に手が伸びます。
同じ料理でも、器の素材や色が変わるだけで、受ける印象がぐっと変わるのがおもしろいところです。
たとえば、少しくすんだ青や深い飴色の器に、炊き込みごはんを盛りつけてみる。
根菜の煮ものや、焼き魚に添える柿の葉。
そんな日々の食卓の中に、秋が少しずつ立ち上がってきます。
器の感触、香り立つ湯気、手のひらに収まる重み。
季節は、こうした五感を通して、静かに暮らしに忍び込んでいるのかもしれません。
季節に気づこうとする気持ちが、暮らしを整える
「季節を感じたい」と思っていても、慌ただしくしていると、
どうしても日々が“過ぎていく”感覚になってしまいます。
でも、ほんの少しだけ意識を向けてみるだけで、
その季節は「そこにあるもの」へと変わってくれます。
たとえば、寝具を秋らしい色に変えてみたり、
台所に置くふきんの柄を落ち着いたものにしてみたり。
そんな些細な変化の中に、自分だけの「季節」がそっと宿るようになります。
変化に気づこうとすること。
それだけでも、暮らしに少しやわらかなリズムが戻ってくる気がします。

秋は、「整える暮らし」にぴったりの季節

夏のあわただしさが落ち着き、冬に向かってゆっくり空気が澄んでくるこの時期。
ほんの少し、足元の暮らしを整えたくなる季節でもあります。
急いで秋を味わおうとしなくても、
ふと手にした器や、台所に立ったときの気配の中に、
自然と季節は立ち上がってきます。
季節を感じる暮らしとは、
自然のリズムに追いつこうとするのではなく、
今ある暮らしの中に、その気配を見つけていくこと。
それはきっと、これからの季節をやさしく迎える準備になるのだと思います。
この記事を書いた人
柴山甲一
酒器の案内人
バーテンダーとして様々な酒や人生と出会い、人生の数だけ酒の楽しみ方があることを知る。「酒の楽しみ方=人生」と捉える目線から、一人じっくり酒を楽しめる器や、誰かとの語らいを楽しむ器など、人に寄り添い人に合わせた“人生を変える酒器選び”をナビゲートする。飲食店などへも、料理人自身が選び切れない器の中から「酒と会話と料理と」を引き立てる器を提供し、その強いこだわりには信頼と定評を得ている。
この記事を書いた人
柴山典子
器人(うつわびと)
静岡の陶器屋の家に生まれ、幼少の頃より家庭用・飲食店用など様々な器に触れながら育つ、器屋生まれ器屋育ちつまり“生粋の器人”。“日本”が誇るもの文化やそれが反映された道具には深い敬意をもち、感動と関心で心の拍手が止まらない。未知に対して興味津々、驚きと笑いを一緒に分かち合えたら嬉しく人との繋がりに日々感謝。「和モノ」のみならずインテリア物は大好物。
この記事でふれた「ゆるやかな丁寧さ」に寄り添う器たち
——使うほどに心がほどける、“日常の相棒”をご紹介します。
鉄釉赤会マグカップ
4,400円(税込)
炭化マグカップ
3,740円(税込)
ジャー(萩焼)
7,040円(税込)