ていねいな暮らしは無理?
雑誌やSNSで見かける「ていねいな暮らし」は、いつ見ても美しいもの。
整った部屋、手づくりの朝食、きれいに畳まれたリネン……
けれど、実際に自分の暮らしと比べてみると、
「そんなの無理」「ああいう人にしかできない」と感じることもありますよね。
暮らしに手をかける気力がない日もあります。
気づけば一日があっという間に過ぎ、今日も何も整えられなかった——
そんなときこそ、いったん立ち止まって、
「そもそも、ていねいな暮らしってなんだろう?」と、自分のなかの“ものさし”を見つめ直してみたくなります。


ていねいさは、“心の置きどころ”に宿る
ていねいに暮らす、というと「時間と手間をかけること」と思いがちです。
もちろんそれも素敵な在り方ですが、
実際には、ほんの数秒の所作にも“ていねいさ”は潜んでいます。
たとえば、器を片付けるときに音を立てずに重ねること。
お茶を淹れるときに、湯気を静かに眺めてみること。
自分や誰かのために、ちょっとだけ優しい選択をすること。
目には見えにくいけれど、そうした「気持ちの向け方」にこそ、
ていねいさは息づいているのだと思います。
忙しい日の深呼吸ひとつ。
その小さな動作が、暮らしをやわらかく整えてくれることもあります。
無理な日こそ、やさしい選択を
体力が尽きて、食器を洗うのも面倒で、
ごはんはコンビニ、家は散らかり放題——
そんな日があっても、何もおかしくはありません。
むしろ「無理して整えよう」としすぎるほうが、
暮らしからやさしさが失われてしまうこともあります。
がんばれない日は、お気に入りの器をあえて使ってみるのもいいかもしれません。
とっておきのお茶碗で、買ってきたおにぎりを食べるだけでも、
ほんの少し気持ちが立ち上がってくることがあります。
整った空間や美しい所作だけが“ていねい”なのではなく、
「自分を大切にするためにどう過ごすか」を選ぶことも、十分ていねいな行為です。


“できなかった”ではなく、“気づけた”を見よう
ていねいに暮らせていない気がする。
そう感じられるということは、
本当は「そうありたい」という気持ちが、自分のなかにちゃんとあるということ。
その気持ちに気づけた日を、まずはそっと肯定してあげてもいいのではないでしょうか。
「できなかった」と落ち込むよりも、
「今日は無理だったな」「明日はどうしようかな」と、
少しずつ問い直すことができれば、それで十分だと思います。
ていねいな暮らしは、誰かの真似ではなく、
自分のなかにある“静かな気持ち”と向き合うことから始まるのかもしれません。
この記事を書いた人
柴山甲一
酒器の案内人
バーテンダーとして様々な酒や人生と出会い、人生の数だけ酒の楽しみ方があることを知る。「酒の楽しみ方=人生」と捉える目線から、一人じっくり酒を楽しめる器や、誰かとの語らいを楽しむ器など、人に寄り添い人に合わせた“人生を変える酒器選び”をナビゲートする。飲食店などへも、料理人自身が選び切れない器の中から「酒と会話と料理と」を引き立てる器を提供し、その強いこだわりには信頼と定評を得ている。
この記事を書いた人
柴山典子
器人(うつわびと)
静岡の陶器屋の家に生まれ、幼少の頃より家庭用・飲食店用など様々な器に触れながら育つ、器屋生まれ器屋育ちつまり“生粋の器人”。“日本”が誇るもの文化やそれが反映された道具には深い敬意をもち、感動と関心で心の拍手が止まらない。未知に対して興味津々、驚きと笑いを一緒に分かち合えたら嬉しく人との繋がりに日々感謝。「和モノ」のみならずインテリア物は大好物。
この記事でふれた「ゆるやかな丁寧さ」に寄り添う器たち
——使うほどに心がほどける、“日常の相棒”をご紹介します。
陶器のボトル:ミント
3,850円(税込)
男前マグカップ:赤
5,500円(税込)
小判型るり小皿
1,045円(税込)