
月下のふたり
とある老夫婦がいます。
ふたりの夜は、満ち欠けする月の光に照らされていました。
老夫婦は寄り添いながら庭に出て穏やかな十五夜の夜空を仰いでいました。
長い歳月を一緒に歩んできた二人は、月見の夜を特別なものと感じていました。
盃を交わす瞬間
二人は庭に並ぶ縁側に座り、陶芸で作った手作りの盃にお酒を注ぎました。
揃いのデザインの盃をもち、月光が二人の顔を照らし、歳月を重ねた笑顔が輝いています。
夫は妻に微笑みかけ「ありがとう。これからもよろしく」と囁きました。
語り合う心の奥底
盃が交わされると、夫婦はどちらからともなく語り出しました。
苦楽を共に乗り越え喜びや悲しみを分かち合ったその瞬間、十五夜の月は二人の絆をより深めるような気がしました。
過去の思い出や未来への期待が、言葉にならない感動を生んでいました。
夫婦はこの盃で十五夜を楽しむのは何度目だろうね、などと言葉を交わし、また来年も…と、話をしました。
二人の思いは、これまで幾度となく過ごしてきた二人の人生を愛おしく思うことで揃っていました。
「月は形を変えるけど、私たちの愛は変わらない」という想いが静かな夜空に浸透し、歳月を超え、共に歩んできた二人の愛はまるで月のように美しく輝いていました。

この記事を書いた人
柴山甲一
酒器の案内人
バーテンダーとして様々な酒や人生と出会い、人生の数だけ酒の楽しみ方があることを知る。「酒の楽しみ方=人生」と捉える目線から、一人じっくり酒を楽しめる器や、誰かとの語らいを楽しむ器など、人に寄り添い人に合わせた“人生を変える酒器選び”をナビゲートする。飲食店などへも、料理人自身が選び切れない器の中から「酒と会話と料理と」を引き立てる器を提供し、その強いこだわりには信頼と定評を得ている。

この記事を書いた人
柴山典子
器人(うつわびと)
静岡の陶器屋の家に生まれ、幼少の頃より家庭用・飲食店用など様々な器に触れながら育つ、器屋生まれ器屋育ちつまり“生粋の器人”。“日本”が誇るもの文化やそれが反映された道具には深い敬意をもち、感動と関心で心の拍手が止まらない。未知に対して興味津々、驚きと笑いを一緒に分かち合えたら嬉しく人との繋がりに日々感謝。「和モノ」のみならずインテリア物は大好物。
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