異空間な作陶家の世界
土を練り、成形し、ひとつひとつ思い描く物にしていく工程には、流れる時間が、私達がいつも使っている時間とは全く異なります。
張り詰めた空気に、緊張感と会話はもちろん、呼吸まで止めてしまうかのような、異次元な空間を目の当たりにします。
周りを取り囲む音や風まで、研ぎ澄まされた世界には、第3者が足を踏み入れてはいけない、聖域のように感じます。
体験が出来る陶芸教室の楽しい空間と違い、プロの作品作りの場を体感出来た事は、貴重な経験でした。
出会に感謝
日本ならではの、春夏秋冬に始まり日々の気温や湿度、風によって乾燥時間も変わり、夏は窯の熱さも相まって、尋常じゃない暑さとの戦いです。
出来上がるまで、気の抜けない作業場での集中力が周りの音をかき消し、没頭する姿には、好きだけではできない、秘めた静かなパワーを感じます。
長時間思いを込めて、出来上がった器をみると、長く大切に、愛着のあるものにして欲しいと、器の声が伝わってくるようです。
同じように作っていても、窯の中で熱の加わり方で、ひとつひとつが個性的な物になります。釉薬や化学反応を起こしたことで独特な模様になったり、シミに見えるのも、人間でいうホクロのような個性が出た器と思ってくださいね。
ふたつと同じ物は、出来上がってこないので、土物は、その時の出会いがご縁ですね。
自分の「推し」を作る
まずは自分が「好きだなあ」と思ったら出会いの一歩です。
色々な器を見て、知る事で、どんな器に囲まれたいと想像し、探す楽しみを見つけるのも、ステキですね。
数え切れない器の中から、「気に入った」と物と出会えるチャンスが来たら、逃さない事です。
次に手に入るかは、わからないからです。
作陶家の思いを手に取って、感じるかもしれませんね。
気に入ったものが手に入ると、ウキウキする感動は、洋服だっったり、靴やバック、見たり聞いたりして感動するものだったりと突き詰める事は、とても奥深いです。
好きな物を、見る目を持つと良い物を見抜く目も、自然とついてきます。
「元気だね」「何か、いい事あった?」「いい事あったよ」思わずニコニコしてしまう事は、誰かと共有しても良し、仲間を作るのも良し、色々な事に興味を持ち続けて広げた趣味は、宝物となり、毎日の暮らしと自身に潤いをもたらせてくれるでしょう。
この記事を書いた人
柴山甲一
酒器の案内人
バーテンダーとして様々な酒や人生と出会い、人生の数だけ酒の楽しみ方があることを知る。「酒の楽しみ方=人生」と捉える目線から、一人じっくり酒を楽しめる器や、誰かとの語らいを楽しむ器など、人に寄り添い人に合わせた“人生を変える酒器選び”をナビゲートする。飲食店などへも、料理人自身が選び切れない器の中から「酒と会話と料理と」を引き立てる器を提供し、その強いこだわりには信頼と定評を得ている。
この記事を書いた人
柴山典子
器人(うつわびと)
静岡の陶器屋の家に生まれ、幼少の頃より家庭用・飲食店用など様々な器に触れながら育つ、器屋生まれ器屋育ちつまり“生粋の器人”。“日本”が誇るもの文化やそれが反映された道具には深い敬意をもち、感動と関心で心の拍手が止まらない。未知に対して興味津々、驚きと笑いを一緒に分かち合えたら嬉しく人との繋がりに日々感謝。「和モノ」のみならずインテリア物は大好物。