
悲しみを受け入れ、気持ちを慰めてくれる器
悲しいとき、感傷的な気分に浸るとき。
人生においては楽しい気分のときばかりではありません。
深く傷ついたときや、大切な人を失ったときなど、悲しみに向き合うことなども避けては通れない道と言えるでしょう。
一口に悲しいと言ってもさまざまなケースがありますが「悲しみ」という感情は、押し殺したり、無視しているといつまでも消化仕切らずに棘のように心に刺さったままになります。
しっかり向き合って、悲しむ。それが心の慰めになるのです。
時々の気持ちを表現することができる食事の場(弔いの食事など)や、その料理。
器もその演出という意味では一役を買う立場です。
感傷的な気分のときには柔らかなデザインで、優しさの表現を
感傷的な気分に寄り添う器というのは、柔らかなデザインをイメージするとフィットしそうです。
曲線や優しい形状が感傷的な瞬間に気持ちへの安堵をもたらし、心を落ち着かせる効果を期待できます。
器のデザインが感傷的な気分と調和することで、自然と食卓におごそかな雰囲気を演出し、心も悲しみと向き合うための準備を手伝い、そこからこころの癒しにもつながることでしょう。
深い色彩は静かに悲しみを彩る
感傷的になっているときは、深い色彩の器は静かな調和をもたらします。
濃い色合いや暗いトーンが、前段に述べたような曲線と相まって穏やかさを演出します。
静寂の中に、感傷的な気分と向き合うきっかけをさりげなく与えてくれることでしょう。
深い色彩の器と、そこにある悲しみなどの深い感情が調和することで、食卓を通して自然と気分が癒やされていくのを感じるきっかけになるかもしれません。
「ひとり」として、悲しみと向き合う重要性
感傷的な気分のときは、自分の悲しみと向き合う姿勢が必要であるため、「ひとり」に視点をあててみてはいかがでしょう?
そのときの悲しみは共有できる部分もあるとおもいますが、結局は一人ひとりの心の波は別の周期で発生するものだと思います。
個々の心はそれぞれで向き合う必要があります。
そんな悲しみという感情に、やさしく触れるように、すこしでも視覚的な要素として癒やしを与える器選びが丁寧に行いたいものです。

この記事を書いた人
柴山甲一
酒器の案内人
バーテンダーとして様々な酒や人生と出会い、人生の数だけ酒の楽しみ方があることを知る。「酒の楽しみ方=人生」と捉える目線から、一人じっくり酒を楽しめる器や、誰かとの語らいを楽しむ器など、人に寄り添い人に合わせた“人生を変える酒器選び”をナビゲートする。飲食店などへも、料理人自身が選び切れない器の中から「酒と会話と料理と」を引き立てる器を提供し、その強いこだわりには信頼と定評を得ている。

この記事を書いた人
柴山典子
器人(うつわびと)
静岡の陶器屋の家に生まれ、幼少の頃より家庭用・飲食店用など様々な器に触れながら育つ、器屋生まれ器屋育ちつまり“生粋の器人”。“日本”が誇るもの文化やそれが反映された道具には深い敬意をもち、感動と関心で心の拍手が止まらない。未知に対して興味津々、驚きと笑いを一緒に分かち合えたら嬉しく人との繋がりに日々感謝。「和モノ」のみならずインテリア物は大好物。
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