毎日同じ器を使う風景と安心感
日常で使い続ける器は、買ってきてから次第に生活の一部となり、自分の生活に密着し、安心感と親しみを醸すようになります。
初めて手に取ったときのインスピレーションからはじまる、単なる食器ではなく、日常の一員として、心に馴染んでいくのです。
やがて、当たり前の風景としてその器がある風景は、心地よさという感覚とつながって記憶にのこっていくことでしょう。
器を通して四季と対話する
日本という国は、世界の中でも四季を慈しむ国民性がある国だと思います。
四季により、ものさみしさや、はつらつとした感じ、エネルギーや生命力に満ちた・・・など様々な気持ちを表現する言葉がありますが、せっかくそんな感情とつながる豊かな季節を、ずっと同じ器を使い続けることはすこしもったいない、という印象です。
器を季節に合わせて、変えてみる楽しさを生活にとりいれましょう。
そして、そんな四季との対話が年間をとおしてリズムとなる風景の中で育つ子供などは、成長したときにもそれが当たり前であったことを意識するようになるでしょう。
そしてそんな感情豊かな生活に気持ちをほっとさせる・・・そんな大人になってゆき、家族と暮らす中でまた、四季と感情をかさねた食卓を自ら演出できるようになると思います。
同じ器が記憶を共有するパートナー
四季に合わせて器を変える、というのは衣替えのような感覚で食卓を楽しみ、それぞれの季節に感情を伴った記憶を残していくことに役立つと思いますが、それぞれの季節の中で毎日使い続ける器はまた、日々のさまざまな瞬間に立ち会い、思い出を刻む証人です。
特別な日や普段の食事、喜びや悲しみの瞬間まで、いつもの器がその瞬間を記憶として刻み、家族の幸せな時間をいろどって行くことにもなるでしょう。
使い慣れた器が持つ安心感は、日々の生活にも安心を与え、さりげない記憶にも日々の愛おしさを見るきっかけになります。
冷たい冬の朝、暖かな夏の夕暮れ、器もその変化に寄り添い、季節感を共有する家族の一員となります。「いつもの器」を通して、食卓が四季折々の美しさを映し出すことも相まって、日常がカラフルに彩られていきます。
手入れの大切さは日常を美しく保つ
器も道具です。
これらを使い続ける生活の中に、ひとつ「お手入れの大切さ」があります。
毎日使うものだから、毎日キレイにして収納する。
適切に洗浄されたり、ケアをされる器が美しさを保ちながら、日常の風景にあると、それだけで気持ちの良いもの。
たいそうな手入れでなくとも、日頃の管理が器に愛着を深め、日ごろの生活そのものを美しく整えておくという気持ちの手助けをしてくれるのです。
この記事を書いた人
柴山甲一
酒器の案内人
バーテンダーとして様々な酒や人生と出会い、人生の数だけ酒の楽しみ方があることを知る。「酒の楽しみ方=人生」と捉える目線から、一人じっくり酒を楽しめる器や、誰かとの語らいを楽しむ器など、人に寄り添い人に合わせた“人生を変える酒器選び”をナビゲートする。飲食店などへも、料理人自身が選び切れない器の中から「酒と会話と料理と」を引き立てる器を提供し、その強いこだわりには信頼と定評を得ている。
この記事を書いた人
柴山典子
器人(うつわびと)
静岡の陶器屋の家に生まれ、幼少の頃より家庭用・飲食店用など様々な器に触れながら育つ、器屋生まれ器屋育ちつまり“生粋の器人”。“日本”が誇るもの文化やそれが反映された道具には深い敬意をもち、感動と関心で心の拍手が止まらない。未知に対して興味津々、驚きと笑いを一緒に分かち合えたら嬉しく人との繋がりに日々感謝。「和モノ」のみならずインテリア物は大好物。
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