家族の歴史を紡ぐ先代の遺産を大切に
家族の歴史は、使い始めた器や使い続けている器に宿っています。
祖父母や親が使用してきた器は、時折傷や割れが入りながらもその優雅なデザインや温もり、その器が合った風景を思い返すことなどで、家族の歴史を思い出すことにもなります。
器は時代や思い出を次代へと繋ぎ、受け継がれていく家族の遺産として、語り部として受け継がれることもあります。
世代を越え、子へと受け継がれる器の温もり
器にはあまり意識しないでもいつの間にか親から子へと受け継がれる過程があり、そんな瞬間にも世代を超えた物語を紡ぎ続けます。
親から子へと継がれる器に家族の絆や愛情が宿っている、なんて考えてみるとそれだけで心がゆたかになるのを感じられます。
子どもたちはその器を通じて親や祖父母の顔を思い出し、自分たちの成長とともに何度も目にすることで、愛された歴史を持ってそういう気持ちを次の子の世代へ受け継ぐことができるようになります。
受け継がれる器は単なる道具以上に、家族の絆や愛情が凝縮された物語の一部となるのです。
孫の代まで、思いはつづく
孫へと進む世代で、器は新たな役割を果たします。
孫たちは受け継がれた器自体に記憶はないので、直接的に歴史に思いははせられないでしょう。
ですが、こうやって食事のテーブルを大切にしよう、という思いが脈々と親を通して伝わって行くのです。
使い捨ての紙皿やインスタントの器そのままを利用するのを厭わない食卓と、受け継いだ器を使う食卓・・・。
こういった風景は子供の心に原風景として残り続けることでしょう。
成長してふと気づく時が来る、あるいは来ないかもしれませんが、「ああ、あのときの食卓の風景は、なんて愛のある風景だったのだろう」と、自分たちの生活は愛情深いものだったことを確認できる記憶になります。
器は家族の文化や伝統を次代へと継承する架け橋であり、孫たちにとって新たな章の始まりを告げるものとなりえます。
孫たちが手にする器はただの食器ではなく、家族の連綿とした愛情の物語の一部としてなってゆくのです。
器と共に紡がれつづいていく家族の未来
「親から子、子から孫へ」と続く食卓を囲む文化は、器にまで気を回す考え方や、料理を大切に届けようという思いとなって未来へと継承されていきます。
この連鎖は単なる器の受け継ぎだけでなく、家族の絆や愛情、それがあった風景や家族の記憶の物語を継承してゆきます。
未来の世代が手にする器はそれ自体が過去からの贈り物であり、家族の歴史が継続する限りその物語は永遠に続いていくでしょう。
「なんでもいい器」ではなく「思いや思い出のこもった器」は、世代を超えて受け継がれる特別な贈り物。
それは、家族の絆や愛情が深まりながら、愛のある風景として未来へと語り継がれていくのです。
この記事を書いた人
柴山甲一
酒器の案内人
バーテンダーとして様々な酒や人生と出会い、人生の数だけ酒の楽しみ方があることを知る。「酒の楽しみ方=人生」と捉える目線から、一人じっくり酒を楽しめる器や、誰かとの語らいを楽しむ器など、人に寄り添い人に合わせた“人生を変える酒器選び”をナビゲートする。飲食店などへも、料理人自身が選び切れない器の中から「酒と会話と料理と」を引き立てる器を提供し、その強いこだわりには信頼と定評を得ている。
この記事を書いた人
柴山典子
器人(うつわびと)
静岡の陶器屋の家に生まれ、幼少の頃より家庭用・飲食店用など様々な器に触れながら育つ、器屋生まれ器屋育ちつまり“生粋の器人”。“日本”が誇るもの文化やそれが反映された道具には深い敬意をもち、感動と関心で心の拍手が止まらない。未知に対して興味津々、驚きと笑いを一緒に分かち合えたら嬉しく人との繋がりに日々感謝。「和モノ」のみならずインテリア物は大好物。
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