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陶器は電子レンジOK?知らないと危険な注意点と安全に使うコツ

陶器の器は、手ざわりの温かさや柔らかな質感が魅力です。
食卓に並ぶだけで料理をやさしく引き立ててくれますが、
「電子レンジにかけても平気なの?」と不安に思ったことはありませんか。

見た目が似ている磁器やガラス製の食器と違い、陶器は素材そのものに“土の性質”が残っています。
そのため、電子レンジで使えるかどうかは器の種類や釉薬(ゆうやく)の状態によって異なるのです。
なかには、短時間の加熱でもひび割れたり、突然破損してしまうケースもあります。

本記事では、陶器を電子レンジで安全に使うための基本知識と、
誤った使い方で大切な器を傷めないためのポイントを、専門店の視点からわかりやすく解説します。

陶器は電子レンジで使える?基本の考え方

土の性質によって変わる「レンジ耐性」

陶器は、粘土を焼き上げて作る“多孔質(たこうしつ)”の素材です。
つまり、表面には目に見えない小さな穴が無数にあり、
そこから水分や油分を吸収してしまうという特徴があります。

この吸水性が、電子レンジにかけるときの大きなリスクになります。
洗ったばかりや湿気を含んだ状態の陶器は、内部の水分が加熱で急激に膨張し、
ヒビや割れを起こしてしまうことがあるのです。
「昨日までは大丈夫だったのに、今日急に割れた」という場合も、
実は器の中に残っていた水分が原因のことが多いのです。

また、磁器やガラスのように“高温で焼き締められた”素材とは違い、
陶器は完全に焼き締まっていないため、耐熱性そのものがそれほど高くありません。
そのため、電子レンジにかける際は「短時間・低出力」で様子を見るのが基本です。
一見丈夫そうでも、長時間の加熱には向いていないことを覚えておきましょう。

「釉薬(ゆうやく)」の種類にも注意

陶器の表面を覆う釉薬は、見た目の美しさだけでなく防水性の役割も持っています。
しかし、この釉薬の成分によっては電子レンジに適さないものもあります。

特に注意が必要なのは、金属を含む釉薬や装飾が施されている器。
金・銀・プラチナなどの金属彩(きんぞくさい)は、電子レンジの中で電波を反射して火花を散らすことがあります。
装飾の一部でも金属が入っていればNGです。

また、一見マットな質感でシンプルに見える器でも、
釉薬に金属酸化物を含むタイプはレンジに不向きなことがあります。
「レンジ対応」と明記のない陶器は、安全のためにまずは加熱しない判断が安心です。

電子レンジOKな陶器とNGな陶器の見分け方

レンジ対応かどうかを確認するポイント

まずは、器の裏面表示やパッケージの注意書きを確認しましょう。
「電子レンジ可」「耐熱」と明記されているものは基本的に安心して使用できますが、
何も記載がない場合は、できるだけ避けるのが無難です。

見た目ではわかりづらいですが、陶器の中でも「高温焼成で作られた磁器寄りのタイプ」は比較的安全です。
焼きがしっかりしていて吸水性が少なく、熱にも強いため、短時間の加熱なら問題ない場合が多いです。
反対に、「民芸調の器」や「手づくりの器」は、温かみがある一方で吸水性が高く、
釉薬の厚みやムラもあるため、電子レンジにはあまり向きません。

陶器は一つとして同じものがない自然素材。
だからこそ、使う前に一度「これはどんな焼き物だろう」と観察してみることが、器を長持ちさせる第一歩になります。

見た目でわかるNGサイン

電子レンジにかけないほうがいい陶器には、いくつかの“見た目のサイン”があります。
まず、金・銀などの金属線やラメ装飾が入っている器はNG。
レンジのマイクロ波が金属部分に反応し、火花や焦げの原因になります。

また、表面にクラック(細かなヒビ)が見えるものも注意が必要です。
そこから水分が染み込んでいる場合、加熱によって膨張・破損する恐れがあります。
さらに、器の底がざらついているものや、軽く叩くと鈍い音がするもの
は、
吸水性が高く水を含みやすいタイプです。こうした器は電子レンジには向いていません。

見た目の風合いは素敵でも、電子レンジでは“危険サイン”になることもあります。
まずは安全を優先し、使い方を分けるのが賢い選択です。

電子レンジで陶器を使うときの注意点

短時間・低出力で温める

陶器は熱をじんわり伝える性質があります。
急激な温度変化に弱いため、電子レンジを使うときは**短時間・低出力(500W前後)**で温めるのが基本です。
一度に数分加熱するよりも、30秒~1分を数回に分けて様子を見るほうが安全です。

特に、冷蔵庫から出したばかりの料理をすぐにレンジへ入れるのは避けましょう。
器と中身の温度差が大きいと、ひび割れや破損につながることがあります。

水気をしっかり切る

陶器は水を吸いやすい素材です。
洗った直後や、料理の汁気が染み込んだ状態で加熱すると、
内部の水分が膨張し、ひび割れや爆発のような破損を引き起こすことがあります。

電子レンジで使う前は、器をしっかり乾かしてから
もし使用後に水を吸った感触がある場合は、一晩ほど自然乾燥させてから次に使うと安心です。

熱いまま冷水につけない

電子レンジで温めた直後の陶器は、見た目以上に高温になっています。
そのまま冷水にさらすと、急激な温度差でヒビが入り、最悪の場合はパリンと割れてしまいます。
特に釉薬が厚い器や、肉厚の器は内部に熱がこもりやすいため要注意です。

加熱後はしばらく自然に冷まし、手で持てる程度の温度になってから洗うようにしましょう。
“急がないこと”が、陶器を長く愛用するための小さなコツです。

電子レンジNGの陶器はどう使う?

温め直しは別の耐熱容器で

お気に入りの陶器でも、「電子レンジ不可」とされているものは無理に加熱しないことが大切です。
どうしても料理を温めたい場合は、耐熱ガラスや磁器製の器に一度移し替えるのがおすすめです。
少し手間はかかりますが、器を長く使うための“ひと手間”として考えると、それもまた楽しみの一つ。

特に手づくりの陶器や民芸調の器は、釉薬の個体差が大きく、加熱によって歪みやヒビが入るリスクがあります。
電子レンジには使わず、温かい料理を盛りつけ用の器として楽しむことで、美しい風合いを保つことができます。
器を守ることは、作り手の想いを大切にすることにもつながります。

NGでも「飾る・盛る」楽しみ方がある

電子レンジが使えない陶器でも、使い方を少し変えれば、まだまだ活躍の場があります。
たとえば、取り皿や菓子皿、小鉢として使えば、日常の食卓を豊かに彩ってくれます。
少し深さのある器なら、果物や季節の花を飾るインテリア小物としてもおすすめです。

陶器は、光のあたり方や置く場所によっても表情が変わる素材です。
使い分けを意識して「盛る」「飾る」を楽しむことで、
お気に入りの器と長く付き合うことができるでしょう。
壊れたり使えなくなった器でも、金継ぎなどの修復によって新たな美しさを宿すこともあります。
“使えない=終わり”ではなく、“別の楽しみ方に変わる”という考え方が、陶器の魅力をより深くしてくれるのです。

陶器を長く使うために大切なこと

陶器はすべてが同じ性質ではなく、電子レンジに向くもの・向かないものがあります。
判断のポイントは「吸水性」「釉薬」「金属装飾」の3つ。
レンジ対応の表示があるかを確認し、加熱する際は短時間・低出力を守ることで、
お気に入りの器を安全に使い続けることができます。

そして、もし電子レンジが使えない器であっても、
盛りつけや飾り方を工夫すれば、暮らしの中で十分に活躍してくれます。
器は単なる道具ではなく、生活を豊かにするパートナーのような存在です。
それぞれの器の個性を理解し、丁寧に扱うことで、
毎日の食卓がよりあたたかく、心地よい時間へと変わっていくでしょう。

この記事を書いた人

柴山甲一
酒器の案内人

バーテンダーとして様々な酒や人生と出会い、人生の数だけ酒の楽しみ方があることを知る。「酒の楽しみ方=人生」と捉える目線から、一人じっくり酒を楽しめる器や、誰かとの語らいを楽しむ器など、人に寄り添い人に合わせた“人生を変える酒器選び”をナビゲートする。飲食店などへも、料理人自身が選び切れない器の中から「酒と会話と料理と」を引き立てる器を提供し、その強いこだわりには信頼と定評を得ている。

この記事を書いた人

柴山典子
器人(うつわびと)

静岡の陶器屋の家に生まれ、幼少の頃より家庭用・飲食店用など様々な器に触れながら育つ、器屋生まれ器屋育ちつまり“生粋の器人”。“日本”が誇るもの文化やそれが反映された道具には深い敬意をもち、感動と関心で心の拍手が止まらない。未知に対して興味津々、驚きと笑いを一緒に分かち合えたら嬉しく人との繋がりに日々感謝。「和モノ」のみならずインテリア物は大好物。

この記事でふれた「ゆるやかな丁寧さ」に寄り添う器たち

——使うほどに心がほどける、“日常の相棒”をご紹介します。

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