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陶器の使い始めにやるべきことは?長く使うための基本ケアと注意点

お気に入りの陶器を手に入れたその日から、大切に育てていく気持ちで。
陶器には、磁器やガラスとは異なる性質があります。だからこそ、最初に少しだけ手をかけてあげることが、その後の使い心地や美しさに大きく関わってくるのです。
「使う前に何をすればいい?」「汚れたり割れやすいって本当?」そんな不安を解消しながら、器とじっくり付き合っていくための最初の一歩をお届けします。

陶器の使い始めに注意すべきこと

急激な温度変化を避ける

陶器は天然の土から作られるため、ガラスや金属に比べて温度変化に弱い性質があります。特に使い始めのうちは、器自体がまだ馴染んでおらず、急激な熱や冷気によってヒビが入ったり、割れてしまったりすることも珍しくありません。これを「熱衝撃」と呼びます。たとえば、冷蔵庫から出したばかりの器に熱々のスープを注ぐ、あるいは冷たい陶器をそのまま電子レンジにかけるなどの行為は避けましょう。

対策としては、使用前に常温に戻す、ぬるま湯に数分浸けておくといった方法が効果的です。また、器を火にかけるのはもちろんNG。直火やオーブンは基本的に使用不可と考えておいたほうが安心です。冷凍庫での保存も、冷えた状態からの温度差によるトラブルの原因になるため避けましょう。丁寧に扱うことで、陶器は長く愛用できます。特にお気に入りの一枚を手に入れたら、ぜひこの「温度差に注意する」習慣を意識してみてください。

電子レンジ・食洗機の使用は慎重に

最近では「電子レンジ・食洗機対応」と書かれた陶器も増えてきましたが、すべての陶器がそうとは限りません。特に「粉引き」や「貫入(かんにゅう)」と呼ばれる細かいヒビ模様のある陶器は、吸水性が高く、内部に残った水分が加熱によって膨張し、破損する恐れがあります。また、高温高圧の食洗機も、繊細な釉薬の表情を損なってしまう可能性があるため注意が必要です。

説明書きやラベルに対応の可否が明記されている場合は必ず確認しましょう。特に手仕事で作られた器や、見た目に柔らかく温かみのある質感のものは、非対応であることが多いです。基本的には、電子レンジや食洗機の使用を避け、手洗い・自然乾燥が推奨されます。陶器を長く楽しむためには、少し手間はかかっても、やさしく扱うことが何より大切。繊細な器だからこそ、手にかけることでより愛着が湧いていくものです。

洗ったあとはしっかり乾かす

陶器は見た目以上に「水を吸う素材」であることをご存じでしょうか?目には見えない小さな気孔が表面や裏面に無数に開いており、そこから水分を吸い込んでしまいます。そのため、洗った後にしっかり乾かさず収納すると、カビの原因になったり、イヤなにおいが染みついたりしてしまいます。特に、器の裏底(高台)は水が溜まりやすい場所なので注意が必要です。

洗ったら、まずはタオルなどで水気を軽く拭き取ったあと、風通しのよい場所でしっかり自然乾燥させましょう。棚に戻すのは、完全に乾いたのを確認してから。湿気のこもりやすい場所での保管も避けるのが無難です。特に梅雨時や冬場など乾きにくい季節には、乾燥時間をしっかり取るようにしましょう。お気に入りの陶器を長持ちさせるためにも、「洗う」と「乾かす」はセットで丁寧に行いたい工程です。

油もの・色の濃い料理には最初は注意

陶器の器は、時間をかけて使い込むことで風合いが増していきますが、使い始めの時期には少し注意が必要です。特に、カレーや醤油ベースの煮物、トマトソースなど色の濃い料理や油分の多い食材は、器に染み込みやすく、黒ずみやにおいの原因になってしまいます。最初からどんな料理にも使えるわけではない、という点を覚えておきましょう。

使い始めの段階では、まず水分を含ませてから使うのがおすすめです。器を水にくぐらせることで、先に気孔を水分で満たし、調味料などが入り込むのを防ぐことができます。慣れてきたら、徐々にいろんな料理に使っていけばOK。自然に器の表情が変わり、自分だけの“育てる器”としての魅力も増していきます。「気を遣いながら使う」のではなく、「器の性格を知る」ことで、より心地よく、そして長く付き合っていける存在になるでしょう。

使う前にやっておきたい!目止めとは?

目止めとは

目止めとは、陶器の表面や内部にある目に見えない微細な隙間(=“目”)を塞ぐ作業のことです。これを行うことで、器に水分や油分、食材の色素やニオイが染み込みにくくなり、変色やカビの予防にもつながります。

やり方はシンプル。鍋にごはんのとぎ汁(または小麦粉を溶かした水)を入れ、器全体が浸かるようにして弱火で10〜20分ほど煮るだけ。火を止めたらそのまま冷まし、器を取り出して洗い、完全に乾かせば完了です。とぎ汁に含まれるデンプン質が隙間を埋め、吸水性を抑える効果があるため、使い始めの器にはぜひ取り入れたい処理です。

最近は不要なこともある

ただし、すべての陶器に目止めが必要というわけではありません。最近では、製造段階で吸水防止のコーティングや焼き締め処理が施されている器も多く、「目止め不要」とされているものもあります。作家ものやブランド品の場合は、取扱説明書や販売店の案内をしっかり確認しましょう。

目止めをしたほうがいいかどうか迷ったときは、「水に数分浸けてみて、水の染み込み跡が出るか」を見るのも一つの目安になります。染み込むようであれば、目止めをしておくと安心です。ほんの少しの手間で、器のもちがぐっと良くなる——それが目止めの魅力です。

陶器を長く楽しむためのポイント

「貫入」を楽しむ

陶器を使っていると、表面に細かいヒビのような模様が浮かび上がってくることがあります。これは「貫入(かんにゅう)」と呼ばれるもので、器が割れてしまったわけではありません。貫入は、釉薬(うわぐすり)と素地(器の本体)の収縮率の違いからくる自然な変化で、陶器の“味”や“景色”とも言えるものです。

たとえば、醤油やコーヒーなど色の濃いものを入れると、貫入に染み込んでいき、器ごとに異なる表情が生まれます。これが使い込んだ陶器の魅力でもあり、愛着が湧く理由のひとつ。新品にはない温もりや深みを感じられる瞬間です。

もちろん、まったく色移りさせたくない場合は、使い始めに「目止め」や「下準備」をしておくと安心です(※目止めについては前段で詳述)。ですが、貫入はあくまで自然な経年変化。過度に心配せず、「育てていく器」として楽しむ視点も、陶器を長く使うための大切なポイントです。

シミや匂いが気になったときの対処法

長く使っている陶器に、シミや匂いがついてしまうことがあります。とくに油分を多く含む料理や、色味の強い食材をよく使う場合は、目に見えなくても器に少しずつ染み込んでいることがあるからです。これは陶器の性質上どうしても避けられない部分ではありますが、適切なお手入れである程度リセットすることが可能です。

もっとも手軽なのは、「重曹を溶かしたぬるま湯に器をしばらく浸ける方法」。これで匂いや軽い汚れは落ちやすくなります。頑固な汚れには、酢を薄めた液や、漂白剤をごく少量加えたお湯を使う方法もあります。ただし、釉薬や土の種類によっては変色の恐れもあるため、目立たない部分で試す、もしくはメーカーの注意書きを確認するのがおすすめです。

また、使用後すぐに洗い、よく乾かすだけでも、シミや匂いの原因をかなり防げます。時間が経つほど汚れが定着しやすくなるので、なるべく早めのケアが鍵です。あきらめずにこまめな対処を心がければ、陶器は何年も気持ちよく使い続けることができます。

毎日のお手入れで器の寿命が変わる

陶器は手間がかかる——そんなイメージを持たれることもありますが、実はほんの少しの心がけで長持ちする器でもあります。毎日の食卓にのぼるものだからこそ、ほんの少し丁寧に向き合うことが大切です。

たとえば、洗ったあとしっかりと乾かすことは基本中の基本。水分が残ったままだとカビや匂いの原因になり、土にしみこんだままの状態が続くとシミにもつながります。風通しのいい場所で十分に乾かしてから収納するのがおすすめです。

また、食洗機の使用や急な温度変化は避けるのが無難です。急激な加熱・冷却によって、ヒビが入ったり、器が割れたりする可能性があります。少し手間に思えても、手洗いでやさしく扱うのがオススメです。電子レンジから出したばかりの器に水をかけることを避けるなど、細かい気づかいが器の寿命を延ばします。

最初のひと手間が、長く愛せる器をつくる

陶器は、買ってきてすぐに使える便利さよりも、手をかけて育てる楽しさに魅力があります。目止めや乾燥など、ほんの少しの下準備をするだけで、シミや匂いを防ぎ、器の寿命をぐんと伸ばすことができます。

また、貫入や風合いの変化を「味」として楽しめるのも陶器ならでは。日々の料理を引き立て、使い込むほどに“自分だけの表情”が育つのは、プラスチックやガラス製品にはない魅力です。

お気に入りの器を長く楽しむためには、日々のお手入れやちょっとした気づかいが大切。難しいことはありません。食べたらすぐに洗って乾かす、急激な温度変化を避ける、たったそれだけで十分です。

陶器は、毎日の食卓に寄り添う頼もしいパートナー。最初のひと手間が、何年も使い続けたくなる器との出会いに変わっていきます。手元の器を育てる時間もまた、豊かな暮らしの一部かもしれません。

この記事を書いた人

柴山甲一
酒器の案内人

バーテンダーとして様々な酒や人生と出会い、人生の数だけ酒の楽しみ方があることを知る。「酒の楽しみ方=人生」と捉える目線から、一人じっくり酒を楽しめる器や、誰かとの語らいを楽しむ器など、人に寄り添い人に合わせた“人生を変える酒器選び”をナビゲートする。飲食店などへも、料理人自身が選び切れない器の中から「酒と会話と料理と」を引き立てる器を提供し、その強いこだわりには信頼と定評を得ている。

この記事を書いた人

柴山典子
器人(うつわびと)

静岡の陶器屋の家に生まれ、幼少の頃より家庭用・飲食店用など様々な器に触れながら育つ、器屋生まれ器屋育ちつまり“生粋の器人”。“日本”が誇るもの文化やそれが反映された道具には深い敬意をもち、感動と関心で心の拍手が止まらない。未知に対して興味津々、驚きと笑いを一緒に分かち合えたら嬉しく人との繋がりに日々感謝。「和モノ」のみならずインテリア物は大好物。

この記事でふれた「ゆるやかな丁寧さ」に寄り添う器たち

——使うほどに心がほどける、“日常の相棒”をご紹介します。

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