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買ってきたお惣菜をあえて「皿に盛る」意味。食事を楽しむヒント

忙しい日の選択肢としてのお惣菜

夕方、仕事や用事を終えて帰る道すがら、
ついついスーパーのお惣菜コーナーに吸い寄せられてしまう日があります。
揚げたてのコロッケや煮物のパックは、どこかほっとする味。
「今日はこれでいいかな」そう思えるだけで、心が少し軽くなります。

けれど、そのままパックのままで食卓に出すのは、どこか味気ないと感じてしまうことも。
そんなとき、少しだけ手をかけて、お皿に盛りつけてみる――それだけで、不思議と食卓の空気がやわらぎます。

「皿に盛る」というひと手間の力

たとえ買ってきたものでも、器に盛ることで料理がいきいきと見えてきます。
とんかつにキャベツを添えて高さを出してみたり、小鉢に分けて食べやすく整えてみたり。
見た目が整うだけでなく、「食事をする」という行為にちょっとした“構え”が生まれます。

器に移し替えることは、単に見た目を整える以上に、
「今日も一日お疲れさま」と、自分や家族に伝える気持ちをこめる時間なのかもしれません。
あえて皿に盛ることは、ほんの小さなことであっても、食卓に愛情を残すやり方のひとつなのです。

その器を選ぶ楽しみ

お気に入りの器があると、「今日はあれに盛ろうかな」と考える時間も楽しみのひとつになります。
渋めの粉引きには煮物がよく映えるし、透明感のあるガラス皿は夏のお惣菜にぴったり。
器を選ぶだけで、買ってきた料理にも、その日らしさが宿ります。

どんなに忙しい日でも、器がそばにあると「食べる」ことが単なる作業ではなく、
「今日を終える、大切な儀式」のように感じられることがあります。
それはきっと、器が“食事の時間そのもの”に静かに寄り添ってくれるからかもしれません。

食卓をととのえる、小さな工夫

パックから器へ――それはほんの数秒のこと。
でもそのひと手間があるだけで、いつもの夕食がすこし丁寧になっていくのを感じます。
家族のぶんも、自分のぶんも、ちょっとだけ「盛る」という行為を加えることで、
今日の食卓に「楽しむ」余白が生まれるように思います。

食事は、暮らしの中で何度も繰り返すもの。
だからこそ、ささやかな工夫の積み重ねが、その人らしい風景をつくっていくのだと思います。
たとえお惣菜でも、器がそこにあれば、ちゃんと“自分の食卓”になる。
そんな小さな確かさを、日々の中で大切にしていきたいですね。

この記事を書いた人

柴山甲一
酒器の案内人

バーテンダーとして様々な酒や人生と出会い、人生の数だけ酒の楽しみ方があることを知る。「酒の楽しみ方=人生」と捉える目線から、一人じっくり酒を楽しめる器や、誰かとの語らいを楽しむ器など、人に寄り添い人に合わせた“人生を変える酒器選び”をナビゲートする。飲食店などへも、料理人自身が選び切れない器の中から「酒と会話と料理と」を引き立てる器を提供し、その強いこだわりには信頼と定評を得ている。

この記事を書いた人

柴山典子
器人(うつわびと)

静岡の陶器屋の家に生まれ、幼少の頃より家庭用・飲食店用など様々な器に触れながら育つ、器屋生まれ器屋育ちつまり“生粋の器人”。“日本”が誇るもの文化やそれが反映された道具には深い敬意をもち、感動と関心で心の拍手が止まらない。未知に対して興味津々、驚きと笑いを一緒に分かち合えたら嬉しく人との繋がりに日々感謝。「和モノ」のみならずインテリア物は大好物。

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